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レーザー治療

レーザー治療

LASERレーザー治療について

レーザー(LASER:light amplification by stimulated emission of radiation)は直訳すると“誘導放射によって光を増幅すること”です。まず、光は電磁波の一種ですので波長特性が存在します。何らかのモノに白色光(様々な波長の光の混合物)を当てると、吸収されなかった波長の光のみが跳ね返り、その波長の光を人間はそのモノの色として認識します。この場合、当てる光も白色光で混合物であり、モノ(例えばオレンジ)も様々な分子の混合物ですので、人間が感じるオレンジ色も様々な波長の光の集合体でムラがあり、波長の緩衝作用により、進行過程で減衰します。ところが、単一の物質にエネルギーを与えて人工的に作り出した光(電磁波)は単一の波長となるため、方向と位相をそろえて取り出せば減衰すること無く直進します。この原理を応用することで常に安定したエネルギーをむらなく対象物に与えることが可能となります。また、眼球は非常に微細な構造をしており、照射する部位ごとに最適な波長(色)を選択することで繊細な治療をすることが可能となります。具体的には、光は波長が長いほど深部に届きますので「青色→緑色→黄色→赤色」の順に深い部位を凝固することになります。ただ、青色は表層の網膜神経線維に強いダメージを及ぼし、使用する機会がないため「緑、黄、赤」を使い分けることになります。

LASERレーザー治療についてLASERレーザー治療について

また、網膜に対する治療と前眼部に用いる治療では概念から装置まで異なってきます。まず、前者網膜に対して使用している治療機器TOPCON社製PASCALは、①網膜色素上皮とその内層の神経網膜間の接着②血管壁や新生血管凝固による固定化③循環不全に陥った網膜からの炎症性物質産生抑制④網膜色素上皮機能の再活性化の4つが代表的な機能です。また、後者前眼部に対して使用しているELLEX社製TANGOは、プラズマ照射による対象組織の蒸散・切開が代表的な機能です。

ここでは、当院で施行しているレーザー治療を対象疾患毎に概念と方法についてご案内します。

RETINAL TEAR網膜裂孔・円孔

眼球内の水晶体後方から網膜にかけての空間には「硝子体」というゼリー状物質が袋に包まれた状態で存在しています。この硝子体は経年変化でしぼんでくるため、硝子体を包む袋によって網膜は牽引を受けることになります。網膜は丈夫にできているため、ほとんどの場合何も傷害は発生しませんが、まれに亀裂や穴が発生します。これを網膜裂孔、網膜円孔と呼び、もともと網膜構造が遺伝的に弱い方や、近視が強いために網膜が薄い方に発生しやすいです。亀裂部より炎症や出血が生じうるため、生理的な飛蚊症(チラチラ影が見えること)と比較し強めに飛蚊症を自覚しやすいです。また、網膜が引っ張られ続けていると、チカチカ光って見える光視症を自覚します。飛蚊症や光視症を自覚されている場合に、瞳孔を開く散瞳検査を含めた精査の上で、網膜剥離に進展する可能性がある場合に治療適応があります。網膜深部近くの網膜色素上皮とその内層側で剥離に進展するため、その間に凝固エネルギーを加えるべく、黄色レーザーを当院外来では使用しております。(※裂孔原生網膜剥離に進展した状態に対して手術室で網膜復位後に術中使用するレーザーは、やや内層側を含めて強めに凝固する目的で、当院では緑色を選択しております。)適切に凝固することで、網膜剥離への進展を防ぎます。

網膜裂孔

  • BEFORE

    BEFORE 術前
  • AFTER

    AFTER 術後

網膜円孔

  • BEFORE

    BEFORE 術前
  • AFTER

    AFTER 術後

DIABETIC-RETINOPATHY糖尿病網膜症

糖尿病は高血糖の持続により全身の血管障害が発生する病気ですが、網膜に分布する血管も例外ではありません。
血管障害は血漿成分や血球成分が漏れることとなって現れ、さらに進展すると血管閉塞を生じ、血流が届かない部位を生じさせることになります。前者が糖尿病網膜症初期の状態で、後者が中期の状態です。初期状態で、網膜障害範囲が限定的な場合は生活習慣の改善を含めた内科的管理の順守により悪化予防可能な場合が多いため経過を見守っていくこととなります。ただ、出血や炎症が広範囲に及んだ場合で内科管理が困難な場合や、中期段階に進行した場合はレーザー治療適応となります。血漿成分の漏出をさせている動脈瘤には直接の光凝固をします。血管壁の凝固効果が最も高い黄色を選択して凝固しますが、周囲に出血等生じている場合は、さらに深達性の高い赤色を選択します。広範に血流障害が生じ網膜の酸素不足が生じ、網膜症中期段階と言われる状態になると、網膜は炎症物質を放出し、新たな血管を発生させようとします。ただ、新たな血管は容易に破綻を繰り返し、網膜障害の悪循環から網膜症後期段階に進展します。それを防ぐ目的で、比較的視機能に影響の少ない網膜の中央部以外の場所に広範に光凝固を施行し、網膜細胞を間引きして酸素需要を減らすことで新生血管を発生させる炎症物質が出ないようにします。出血部以外では黄色を用い、出血部は赤色を用います。ただ、赤色は深部に到達し、術中疼痛を発生させやすいことと、さらに深部の脈絡膜に障害を起こすことがまれにあるので当院では限定的な使用に留めております。

  • BEFORE

    BEFORE 術前
  • AFTER

    AFTER 術後

RETINAL MICROANEURYSM網膜細動脈瘤

高血圧等が要因となる動脈硬化症を有する高齢女性に発症しやすいです。コーツ病と呼ばれる毛細血管障害を起因とする特殊疾患の他、中心性漿液性網脈絡膜症という脈絡膜から網膜へ至るバリア破綻を要因とする疾患で自然軽快しない場合にも同じような手技で治療致します。どれも血漿成分や血球成分が漏出する疾患ですので、それを止めるために行います。当院では、ほとんど黄色を使用して凝固しますが、動脈瘤が血管と接している部位では、黄色照射で正常血管を閉塞させる危険があるため、状況に応じて赤色を選択します。

RETINAL MICROANEURYSM網膜細動脈瘤RETINAL MICROANEURYSM網膜細動脈瘤

CME嚢胞様黄斑浮腫

網膜で視機能にとって最も大事な中心部を黄斑と呼びますが、その場所に血漿成分が風船状に多発して貯留した状態を指して嚢胞用様黄斑浮腫と呼びます。栄養補給を担う脈絡膜からの循環が傷害されることと、機械的ダメージによって、放置すると視機能障害の原因となります。糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症等様々な血管障害性疾患が原因となり発症します。

CME嚢胞様黄斑浮腫CME嚢胞様黄斑浮腫
CME嚢胞様黄斑浮腫CME嚢胞様黄斑浮腫

現代における本疾患治療の第一選択は抗VEGF(vascular endothelial growth factor血管内皮細胞増殖因子)剤と呼ばれる、血管から血漿成分が漏出することを促す炎症成分を制御する薬剤の硝子体内注射ですが、治療に抵抗する場合や、繰り返される場合の経済的問題がでてきますので、そのような場合に適応となります。局所的な動脈瘤が浮腫の原因となっている場合は前述の通り、動脈瘤を直接凝固しますが、ここではどこからともなくびまん性に浮腫を起こしている場合について言及します。

黄斑は視機能にとってとても大切な場所のため、見えない箇所箇所(暗点)を生じるような通常の凝固は避ける必要があります。当院では「閾値下凝固」といって、極弱い出力の黄色レーザーをパターンスキャンでむらなく照射し、熱で固めるのではなく、網膜深部にある網膜色素細胞の代謝活性化を促すことを目的とした治療法を採用しております。副作用は限定的である反面、網膜色素上皮機能があまりに弱っている場合は効果に乏しいこともあります。実際の治療の際は、OCTやOCTangiographyでその点を見極め、奏功の可能性についてご説明し、ご希望下さった場合に実施させて頂くこととなります。

CME嚢胞様黄斑浮腫CME嚢胞様黄斑浮腫

AMD加齢黄斑変性

疾患説明の頁で病態についてご説明しますが、加齢黄斑変性のうち「滲出型」と呼ばれる疾患で適応を検討することとなります。加齢黄斑変性での網膜・脈絡膜障害部位が黄斑以外に限局しており。光凝固に伴う暗点発生で甚大な視機能障害が発生しないと考えられる場合に適応となります。炎症部を見極め、黄色レーザーを用いて血管壁を直接凝固し消炎を得ます。

AMD加齢黄斑変性AMD加齢黄斑変性

GLAUCOMA緑内障

まず、網膜にレーザー照射する上記までとは別の装置で、ELLE社製TANGOのQスイッチ半波長(532mm)Nd:YAGレーザーモードを使用します。ネオジム・イットリウム・アルミニウム・ガーネットを媒体にしたNd:YAGレーザーは産業分野の他、皮膚美容分野でも使用されており、強いプラズマ発生による切断や蒸散に用いられます。

GLAUCOMA緑内障GLAUCOMA緑内障

角膜と強膜の境界付近に存在し、生理的房水流出路においてフィルターの役割を担う線維柱帯に低エネルギー短パルス波レーザーをプラズマ照射し、同部位のメラニンだけをレーザー処理して房水流出抵抗を減らし、眼圧下降を促します。7割前後の患者様に効果が得られ、奏功すると眼圧が2~6mmHG程下降します。的確な治療を行えば、10分程で完了し組織破壊を伴わないことから合併症のリスクは極限られます。また、時間経過に伴いメラニンが再蓄積して眼圧が再上昇した場合に再度照射することも可能です。

AFTER CATARACT後発白内障

ELLE社製TANGOのQスイッチ(1064mm)Nd:YAGレーザーモードを使用します。
白内障手術(水晶体再建術)施行後数年かけて2割程の方に発生する疾患です。水晶体は水晶体嚢と呼ばれる透明な袋と内容物に分けられますが、内容物の細胞が変性混濁すると白内障と呼ばれる状態になり、視機能障害をきたします。

SECONDARY CATARACT後発白内障SECONDARY CATARACT後発白内障

白内障手術では水晶体嚢前面を丸くくり抜き、変性混濁した内容物のみをきれいに除去し、水晶体嚢内に人工レンズ装填します。
ただ、経年変化で水晶体嚢内に残存した僅かな水晶体上皮細胞が再増殖して混濁を発生させることがあり、これを後発白内障と呼びます。初期段階で混濁が軽度の場合は視機能障害程度は限定的ですので経過観察しますが、混濁が増強した場合は治療適応となります。尚、手遅れということはほとんどないため、治療実施の時期は患者様のご希望最優先となります。Qスイッチ(1064mm)Nd:YAGレーザーモードを用いて、再増殖した水晶体上皮細胞が付着して混濁した水晶体嚢にプラズマ波を照射し、視路に関係する箇所に必要十分な窓を作成します。感覚神経が通る組織を破壊するわけではないため、本治療中に痛みが発生することはほぼありません。また、治療の際に散乱した水晶体上皮細胞等は飛蚊症として自覚されますが、時間経過で自然吸収されます。

  • BEFORE

    BEFORE 術前
  • AFTER

    AFTER 術後