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加齢黄斑変性

加齢黄斑変性加齢黄斑変性

AMD加齢黄斑変性とは

目は光を取り入れて、角膜→水晶体→硝子体の順に眼内の透明な構造物を通過させ網膜で受け止めます。この網膜の中央部に直径2mm程の濃い黄色をした箇所(黄斑)があり、主にここで得た光信号を電気信号に変換して脳に視神経を介して送り、後頭葉で高精細な輪郭や色として認識しています。黄斑変性はこの「見る」という行為において眼球内で最も大事な機能を担っている部位が変性してしまう病気であり、そのうち加齢に伴って発症し、日本人失明原因第4位となっているものを「加齢黄斑変性」と呼んでいます。病態について少しだけ詳しく述べます。

ARMD加齢黄斑変性とはARMD加齢黄斑変性とはCopyright: Novartis Pharma K.K.

人は網膜で光を電気に変換する際、網膜の一部(視細胞外節)を損耗させて電気を発生し、ビタミンA等の栄養素で再生させることを行っていますが、長年の変化で老廃物(リポフスチン)が排除しきれず蓄積していきます。
この老廃物がさらに増加すると、炎症反応を介してさらに奥の循環をつかさどる膜(脈絡膜)に変性したタンパクや脂質(ドルーゼン)が蓄積します。これらの老廃物は邪魔ものなので、人間は何とか排除しようと努力するわけですが、その反応が炎症となって現れます。ドルーゼンが徐々に増えていく過程で慢性の炎症反応が続き、脈絡膜に接している網膜部位(網膜色素上皮)が弱って変性していきます。これに対し、何とか炎症を鎮めるために様々な化学物質を産生して対処しようとするのですが、その中には新しい血管を発生させる化学物質(VEGF:vascular endothelial growth factor血管内皮増殖因子)も含まれています。

ARMD加齢黄斑変性とはARMD加齢黄斑変性とは
ARMD加齢黄斑変性とはARMD加齢黄斑変性とは

手足を怪我して炎症が起こって、新生血管が発生して傷と炎症が治るのは良いのですが、目の奥で同じことが起こるとまずいことになります。人体の中で最も血流が豊富な脈絡膜はこの化学物質の作用で新しい血管を生やします。網膜と脈絡膜の間には強力な隔壁(ブルッフ膜)が備わっているのですが、慢性の炎症でこの隔壁が弱っていると新生血管に突き破られることがあります。隔壁を破った新生血管は伸び放題となり、またこの作られたばかりの幼弱な血管は脆いので破綻を繰り返し周りは血だらけになります。この現象が繊細な網膜の黄斑で発生すると、黄斑の神経としての機能は弱ってしまい黄斑変性といわれる状態になります。
ただこれは黄斑変性のうち、「滲出型」と言われ東洋人に多いタイプの黄斑変性での病態説明です。対照的に、ドルーゼンが増加した後、破綻が起こらず徐々に変性のみ進行していく病態を「委縮型」と呼んでおり、西欧人に多く見受けられます。

SYMPTOM加齢黄斑変性の症状

黄斑部に老廃物が溜まってくるので「歪んで見える」ことが最初に自覚される代表的な症状で、進行すると中心視野が暗くなり、視野欠損等発生します。また、黄斑という網膜の中央部に起きる病態ですので視野の中央部以外はあまり変化しないことが多いです。男性に起こりやすく、急速な高齢化から罹患患者様は増大傾向にあります。脂質等の蓄積現象が主体となる疾患であることから「目のメタボリックシンドローム」とも呼ばれています。

SYMPTOM加齢黄斑変性の症状SYMPTOM加齢黄斑変性の症状Copyright: Novartis Pharma K.K.

DIAGNOSIS加齢黄斑変性の診断

眼底カメラ、OCT、OCT angiography、蛍光眼底造影等施行し、病期の範囲・進行度・加速度を調べます。

TREATMENT加齢黄斑変性の治療

加齢黄斑変性のうち「委縮型」に対する治療法で確立されているものは残念ながら現時点でございません。委縮した黄斑を再生させる“再生医療”が実質的に臨床応用される将来を待つこととなります。以下では「滲出型」に対する治療法についてご説明します。

抗VEGF療法

上記しました化学物質:VEGFを無力化する抗体を用いる方法で、最も広く行われています。製剤は注射薬で硝子体腔に直接注入します。進行予防としての効果とある程度の視機能回復効果を備えています。ただVEGFの産生が続く限り注入が必要なため、対症療法としての位置づけになります。

ラニビズマブ(ルセンティス®):1回の注射で1カ月程の抗VEGF効果
アフリベルセプト(アイリーア®):1回の注射で1~2カ月程の抗VEGF効果
ブロルシズマブ(ベオビュ®):1回の注射で1~3カ月程の抗VEGF効果

抗VEGF療法抗VEGF療法Copyright: Novartis Pharma K.K.

光線力学療法

特殊な波長の光(レーザー)に反応して活性酸素を発生させる物質を腕から注射し、滲出性変化を起こしている新生血管に達した時にレーザーを照射して病変部で活性酸素を発生させる治療法です。活性酸素は新生血管の内壁を傷つけ、凝固反応を誘発し、閉塞させます。とても機能的ですが、正常な組織をもある程度傷つけることがあり、全ての滲出型加齢黄斑変性に適応となるわけではございません。

光線力学療法光線力学療法Copyright: Novartis Pharma K.K.

網膜光凝固術

黄斑のさらに最重要箇所として真ん中にややくぼんだ箇所があります。ここを中心窩と呼び、黄斑の中でも最重要箇所です。黄斑にレーザー治療をするとレーザーした場所は見えない箇所(暗点)として永続しますが、中心窩以外に新生血管があり、レーザー治療による暗点発生の了解が頂ける際はレーザー治療(網膜光凝固術)が適応となります。暗点は発生しますが、治療繰り返しの必要性は最も低いです。ただ多くの場合において新生血管は中心窩にかかっていることが多いため、適応は限られます。

網膜光凝固術網膜光凝固術Copyright: Novartis Pharma K.K.

PREVENTION加齢黄斑変性の予防

現時点で根本解決法が確立されていないため「予防」が最も大事なことです。

  • 健康的な衣食住生活を送る

    「目のメタボリックシンドローム」であることから健康的な衣食住生活を送ることです。目の栄養となるビタミンAを多く含むにんじん、かぼちゃ、ほうれん草を食事に取り入れ、高糖質・高脂質をさけましょう。適度な運動、十分な睡眠も推奨されています。サプリメントも開発されており各社からルテイン含有タイプのものが出ており、有効であると言われています。

  • 太陽光の過剰摂取を避ける

    太陽光の過剰摂取を避けましょう。光を過剰に浴びるとその分だけリポフスチン→ドルーゼンが溜まる頻度が増しますので、屋外活動が長時間に及ぶ際はサングラスや帽子等の着用が推奨されます。

  • タバコの煙を避ける

    タバコの煙を避けましょう。タバコの煙も血管内壁障害を起こしますので有害であり、喫煙者は加齢黄斑変性有病率が高いことが実証されています。

【 補足 】
同じく歪みや中心視野欠損を自覚し、黄斑が関係する疾患として他に「黄斑上膜(網膜前膜)」、「黄斑円孔」等ありますが、硝子体手術で治療可能ですので、硝子体手術の頁でご説明しております。