眼内レンズの詳細


LENS眼内レンズについて
白内障手術(水晶体再建術)は生まれ持った水晶体を除去し、新たに人工水晶体(眼内レンズ)を装填する手術です。診断機器の発達はもとより、術前状態の測定精度の向上、手術機器の革新、医療技術の進歩や経験により手術加療行為自体は極めて安全なものとなっており、例え条件が悪い状態(角膜混濁、チン氏帯脆弱等)であってもそれをカバーし得る技術があり、当院も万全の準備のもとに日々手術加療を遂行しております。
よって白内障手術を迎えるにあたっての最重要事項は眼内レンズの選択であり、ご説明の9割はこの項目に割いております。医療技術が発達した現代において水晶体再建術を施行する眼科医に最も求められるのは、最新の眼内レンズの特性をどれほど広くまた深く知っており、様々な社会環境にあられる患者様が拠出可能な費用の中で最大限の効果を発揮できるレンズを選択する提案力であると言っても過言ございません。創業依頼、2万症例を超える手術加療をさせて頂いており、尾張・美濃地方にお住いの方々の特性や好みは当地で生まれ育った院長始めとするチーム全体に浸透しております。実際の手術前説明時には、眼内レンズを適切に選択し、術後にしっかりとした満足が得られるよう適切にサポートさせて頂いております。
本頁では当院で使用している眼内レンズについての特性についてご説明します。


Singlefocus Lens保険適応内の眼内レンズ
まず当院で使用している眼内レンズ全てに言えることですが、レンズ素材自体は一生使用できるものを選定しており、これは大前提です。
目はカメラに例えられますが、より細かく言いますとミラーレス一眼レフカメラと同様の構造をしております。ただ、目の長さはカメラのように変えられないため、焦点合わせの操作に対する柔軟性は極めて限られます。限られた条件の下で日々進化を遂げており、その工夫についてのご説明となります。


保険適応内の眼内レンズとして存在する「単焦点眼内レンズ」についてご説明します。
まさにミラーレス一眼そのものと言えます。ピント一点集中型で、ピントが合っている距離は凄い解像度を享受できます。


遠く(3m以上遠方)にピントを合わせた場合、遠くの景色ははっきり見え、大半のスポーツをするのにはうってつけとなります。ただ、1m以内の距離に対する解像度の配分がほぼありませんので手元の作業では老眼鏡の使用が必須となります。逆に手元(例えば30cm)に合わせた場合、読書を裸眼で行うのはとても快適ですが、歩行動作を含め、ほとんどの日常動作の際は近視眼鏡を要することになります。
ピントがあった位置の解像度を最も重視するのであればこの「単焦点レンズ」が最適と言えます。単焦点レンズであったとしても乱視を減らすことは可能であり、最新のレンズは「非球面レンズ」の形式をしているので周辺部の歪みの原因となるような収差は最新のカメラレンズ同様、ほぼ0に抑えられています。
日常生活において、見る範囲の変動が限られており、焦点が合わない距離に対して手術以前から眼鏡を利用することに抵抗がない場合には、医療費を抑えつつも十分な満足が得られると考えられます。
また、単焦点レンズを選択しつつもある程度の遠近距離の焦点を確保する方法としてモノビジョン法があります。
左右の焦点を遠方・近方でややずらす方法です。利点はありますが、立体感・遠近感が損なわれ、複視を自覚する場合もあるため、ある程度のリスクを伴います。生まれつきのピントに左右差があり、生来モノビジョンの見え方に慣れているような限られた方々には有効な選択肢の1つとなり得ます。
当院で主に用いている単焦点眼内レンズを提示します。
以下の2製品は乱視矯正機能付加型眼内レンズで乱視を減らすことが可能です。当院では約3割の方に乱視矯正負荷型眼内レンズを使用しております。


PREMIUM 01選定療養対象のプレミアム眼内レンズ
単焦点の欠点をカバーする存在として、レンズの形状を工夫することで光路を分散して焦点を複数設ける「多焦点眼内レンズ」があり、世界各国様々なニーズに伴い様々な種類のレンズが選択可能な時代になっております。
ピントの選択肢には遠方(3m以上先)、中間(50cm~1m)、近方(30cm~40cm)の概ね3つがあり、レンズ毎に光線配分は様々で、それぞれに応じて利点・欠点が存在します。特に夜間、周囲が暗い環境の中で強い光源を見た場合にグレア(光が長く伸びてまぶしく感じること)やハロー(光の周辺に輪がかかってみえること)を自覚することがあります。ただ視界の広がりや解像度のさらなる向上、また欠点の改善を含め、この分野の進化はまさに目を見張るものがあり、スマートフォンと同じく毎年のようにどんどん進化しています。
人それぞれ不自由を自覚する基準は様々ですが、より進化した眼内レンズを使用するべきですので、白内障を有していても生活に対する支障が限られている場合はレンズのさらなる進化を待ってからの手術をお勧めしております。当院でも毎年1500件ほど施行する水晶体再建術のうち、約2割の方はこの多焦点レンズを選ばれており、先進医療適応であった時代から積み重なった独自の経験を踏まえて各眼内レンズの特性についてご説明します。


Johnson & Johnson社製 TECNISオデッセイハイブリッド型着色非球面連続焦点眼内レンズ
遠方から中間と近方に至るまで連続的に焦点が合い、実生活に適した設計がなされています。TECNISの独自アクリル素材が色収差を抑制するため、高い感度が期待でき、薄暮条件下でもコントラスト良好です。
ALCON社製 CLAREONパンオプティクス着色非球面アクリル3焦点レンズ
3m以上先の遠方と50cm強の中間から35cm強にかけて焦点が合うように設計された3焦点レンズで、設計特性から光学的ロスが極少量に抑えられており、近方も含め、全ての距離で満足度の高いレンズと言えます。乱視矯正タイプもあります。
ALCON社製 CLAREONヴィヴィティ波面制御型焦点深度拡張レンズ
ハロー・グレア・夜間光視症と多焦点眼内レンズ特有の異常光視症を単焦点レンズと同程度まで軽減されています。優れた遠方視と中間視および実用的近方視を実現しています。
HOYA社製 VIVINEXジェメトリック、ジェメトリック+
純国産で初めて開発された三焦点眼内レンズで、中間+1.75 D(約80cm)、近方+3.5 D(約40cm)の中、光配分は遠方重視であり、ハロー・グレアといった不快光視現象の低減が期待されます。一方ジェメトリック+はやや近方に光配分する分、ハロー・グレアはやや増します。
BVI社製 ファインビジョンHPアポダイズ回折型の着色非球面アクリル3焦点レンズ
3m以上先の遠方と50cm強の中間から30cm強にかけて焦点が合うように設計された3焦点レンズで、3焦点眼内レンズの中では手元が最もよく見え、良好な視界が確保されます。乱視矯正タイプもあります。グレア・ハローはややあります。